「相続税、贈与税見直しへ本格的議論開始」
政府税制調査会は、相続税や贈与税の見直しに向けて専門家の会合を設置し、本格的に議論を開始しました。
高齢者が持つ資産を若い世代に移し、経済の活性化を図るためにどのような税制にすべきかを議論する事が目的です。
二人以上の世帯が持つ金融資産のうち、世帯主が60歳以上の世帯が保有する資産は、全体のおよそ65%を占めている状態です(総務省調査結果)。
こうした状況から与党などからは、高齢者から若い世代への資産の移転を税制面から促すことで、経済を活性化させるべきだという指摘も出ています。
非常に聞こえが良く、贈与税が安くなった結果、贈与する事で相続財産も少なくなり相続税も安くなりそうだと考えがちですが、そういう訳には行かないのが税金の世界です。
減税する部分があれば、必ず増税する部分を作り、税収を確保するのがしっかり者の財務省の役割です。
専門家会合の第一回会議は、10月5日に「資産移転の時期の選択に、より中立的な税制の構築」というテーマで開催されました。
「より中立的な」という部分がポイントですね。
これは、現在の贈与税の110万円の基礎控除や贈与税と相続税の税率差を活用した暦年贈与による相続税圧縮を「中立的ではない」と考えている証です。
これらを是正し、課税の公平(税収の確保)を保ちつつ、資産の移転を促す方法を検討するという事です。
この議論の末の結論の予想ですが、令和3年末に発表された「令和4年税制改正大綱」にも記載があったように、諸外国の制度を習って、実際に贈与した年の贈与税は控えめに課税することとし、その代わりの税収の確保のために贈与した財産が相続税の計算に加算される年数が現行の3年から10年程度に延長される既定路線の可能性が高いと考えます。
こうなると高齢になってから贈与しても、10年以内に亡くなってしまえば結局相続税が課税されてしまうので、財産を多く持っている人が、より若い年齢で、贈与する事を検討し、より若い世代へ贈与を行う事で、実際にお金が必要な子育て世代等に資金が巡り、滞っていた資金の流れを活性化出来ると考えていると思われます。
制度改正は間近に迫っていると思われます。
次世代に贈与しようと検討している方は、なるべくお早めに実行する事をお勧め致します。